[FF11] ヴァナ・ディール経済学

最近、ヴァナでの物価が急上昇している、と感じているのは、
おそらく私だけではないはずです。
以前、数百ギルで購入できていた土のクリスタル12個なども、
今では1000ギルを超える値段に跳ね上がっているし、
チョコボの騎乗料金などは、昔は500ギル程度たったものが、
最近、ジュノで乗れば4桁料金はほぼ日常になっていますよね。
なぜこんなことになってきているのか…。
今回はこれについてちょっと考えてみます。
○需要と供給
ヴァナ・ディールは、仮想世界といえど、
その経済の仕組みは現実社会に似た姿であると考えられます。
基本は需要と供給の関係。
モノの需要が高まれば、その価格は上昇します。
逆に、需要が減れば価格も下降します。
同様に、供給が増えれば価格が下がり、
供給が減れば価格は上がりますね。
結局、需要量が供給量を上回れば価格は上がる、
供給量が需要量を上回れば価格は下がる、となる。
その割合で相場は変動していきます。
例えば、土のクリスタル(以下、土クリ)について考えてみます。
以前、土クリは、その使い道が少なく、
裁縫合成くらいにしか利用されていませんでした。
加えて裁縫を手につけているプレイヤーもそれほど多くなく、
その割に土クリをドロップするモンスターは多いと。
結果、供給過多となってしまい、
土クリは、8種類あるクリスタルの中でも最安となっていました。
ところが最近、新しいレシピが追加になり、
土クリの利用機会が増えてきました。
注目すべきは、調理での魚活合成の追加です。
スシ系の食品合成はほぼ土クリが触媒となっています。
しかも、スシは、
従来の食品には少なかった命中率ブーストの効果があり、
前衛ジョブの食事として高い人気を得ています。
ゆえに、その需要は増え、
その触媒である土クリの需要も増加する。
結果、土クリの値段も上昇する…と。
○仕様変更の影響
上記の土クリの相場の変動は、外部要因もあります。
急にその需要が高くなったきっかけは、合成レシピの追加です。
これは、バージョンアップによる仕様追加です。
つまり、ヴァナ内部でこのような流れが発生したわけではなく、
システム的な変更による相場変動なのですね。
このような動きは、
ゲーム制作、運営サイドの意向で操作されているものです。
上記の場合、極端に低い土クリの価値を
他の種類のクリスタルと同様のレベルまで引き上げるべきだろう、
という運営側の意向を反映したものかもしれないのですね。
単純にそればかりではないと思いますが、
結局、このような流れは、いわゆる外部からの操作による、
いってみれば“意図的な介入”による経済動向といえるでしょう。
その世界の経済が崩れないために、
MMORPGの世界では、このような介入が要所要所で施されます。
○貨幣価値と経済
インフレーションとデフレーション。
その流れを決めるのは貨幣価値です。
貨幣が多く出回ると、その価値は下がり、物価は上がります。
逆に、貨幣流通が少なくなると、その価値は上がり、物価は下がります。
貨幣というのは、いうまでもなく、モノを購入する際の対価です。
つまり、貨幣価値は、需要と供給の関係とも関連していて、
モノの流通量と貨幣の流通量の割合で、
経済がインフレになるかデフレになるかが決まってくるのですね。
 モノの流通量>貨幣の流通量 → デフレーション
 モノの流通量<貨幣の流通量 → インフレーション
ヴァナの貨幣というのはギルです。
このギルが現実の社会の貨幣と大きく違う点は、
その発行量が無制限である、ということです。
加えて、ヴァナ内で取引されるモノの多くは、
一度世に出たら、それが消えることはありません。
食品や薬品などを除く多くの装備品やアイテムは、
基本的にずっとその価値を保ち続けます。
現実社会であれば、
例えば、円やドルの基本的な発行量は決められており、
それが無尽蔵に流出することはありません。
また、現実社会には、減価償却(使用済みのモノの価値は下がる)
という概念があり、かつ、モノはいつか壊れてなくなります。
つまり、現実は、モノや貨幣の量に限界があるのに対し、
ヴァナでは、モノや貨幣の量が無限である、のです。
○ギルの無限増殖
では、具体的に、そのギルはどこから出てくるのか?
ギルは、ヴァナ内で取得される、または生産されるモノを、
システムに(つまり、店に)売却することで得られます。
その際、そのモノはシステムに回収され(ヴァナ世界から消え)、
その対価としてギルが生まれるわけです。
ならば、そのモノはどこから来るのか?
例えば、システム(店)から購入することで得られます。
また、モンスターを倒して得ることもできます。
あとは、採掘や伐採などでも得られますね。
店から購入する分には、何の問題もありません。
大抵の場合、店から購入する価格は、
店へ売却する価格より高く設定されているので、
システムがギルを回収するひとつの手段ともなっています。
問題は残りの要因です。
モンスターというのは当然絶滅することはありません。
一度倒しても、同じモンスターが一定条件下で再度POPします。
そして、そのモンスターは、
常に何らかのアイテムをドロップする可能性を有しています。
採掘や伐採についても同様で、それらを得られるポイントは、
これも一定条件でPOPするようになっていて、
そこからはほぼ無限にアイテムを取得することが可能です。
これはどういうことか。
極端な話をしましょう。
仮に、クロウラーを倒すと絹糸を20%の確率でドロップする、
(5匹倒せば絹糸1つ得られる)
また、その絹糸を店に売却すると200G得られる、とするなら、
100匹倒すと、4000G手に入れることができる、となります。
クロウラー自体は無限にPOPするので、これを繰り返せば、
際限なく200Gが得られることになる…ということになるわけです。
○中華問題
ギルを際限なくシステムから吸い出すことができるのは、
上記の理屈から理解できるかと思います。
で、実際にそんなことをしている人がいるのか?
というと、いるんですね。
それが、俗に“中華”と呼ばれる、
主に中国系のRMT業者、或いはその関係者だといわれています。
RMTというのは“リアルマネートレード”の略称で、
ゲーム(仮想)世界のアイテムや貨幣、或いは情報を、
現実のお金(円やドル)で取引する、という行為です。
中華と呼ばれる人たちは、組織的にギルを稼いで、
一般プレイヤーにそれをリアルマネーで売り渡しています。
そのようなギルも、ヴァナ市場に流通することになり、
全体のギルが過剰な状態となってギル価値は下がり、
結果としてインフレが起こることになるのです。
つまり、RMTは、
ギル価値を下げ、大規模なインフレの原因となっている、
といえるわけですね。
○システム介入による対策
このような状況を放置していると、
ヴァナ経済はいずれ崩壊すると考えられます。
運営サイドもこれを黙って見ているわけにはいかないので、
いろいろと対策も考えられているようです。
改善策として考えられるのは、主に次の3点。
1.システムからのギル吸出しを抑える
2.システムへのギル回収率を上げる
3.消費アイテムの使用量を増加させる
1に関しては、アイテムの店売り価格を下げる、
という変更が考えられます。
これによって、システムから吸い出されるギルを、
少し抑えることがでるわけですが、
長期的に見ると状況は変わりません。
ただ、ギルが吸い出される速度を低く抑えることはできます。
2については、単純に物価を上げても、
プレイヤー同士の取引で相場が決まってくるのが現実なので、
(店での定価などはあってないようなものですよね)
ギル回収の機会を増やす、というのが妥当策となるでしょう。
例えば、移動手段の利用機会を増やして、
その利用料金でギルを回収する、という方法があります。
ヴァナの主な移動手段といえば、
チョコボ、定期船、飛空艇、NPCテレポ、などがありますが、
特に最近は、チョコボの騎乗料金の高騰が目立ちますね。
そして3。
基本的にFFXIにおける装備品は永遠に新品です。
いくら使用しても価値は落ちず、同様の性能を保ち、
それが壊れることもありません。
ということで、モノは増え続けることになるのですが、
一方で、使用するとなくなるアイテムもあります。
例えば、食品類、薬品類、矢や弾、忍具などですね。
最近は、エンチャントアイテムと呼ばれる、
使用回数が制限されたアイテムも追加されています。
アイテムが消費される、ということは、
結果的に、それと等価のギルをシステムが回収する、
ということになります。
つまり、これらのアイテムの利用機会を増やすことも、
ひとつの対策として考えられるのですね。
食品や薬品を一挙に消費する機会というのは、
バトルフィールドやコンフリクトなどが考えられます。
ミッションやクエストにも、
バトルフィールドのような要素を取り入れ、
消費アイテムの需要を高めるというのは、
実は、同時にギル回収の目的も果たしている、
と考えることができるでしょう。
最近、ENMクエストという要素が追加されましたが、
これは、バトルフィールド突入条件として通例だった
獣人印章(獣神印章)が不要になっており、
かつ、そこで倒されても経験値は減りません。
これは、バトルフィールドを利用しやすくして、
アイテム消費を増やす意図もありそうです。
また、これは特に私見なのですが、
最近、忍者、狩人といったジョブが、
妙に優遇されている、と感じます。
上記のことから考えると、これらのジョブは、
消費アイテムを最も多く利用するジョブである、
ということに無関係ではない気もします。
○総括
様々なシステム介入が行われているにも関わらず、
ヴァナ経済の実情はインフレ傾向にあります。
その主たる要因となっているのは、
おそらくRMT(中華)の存在であると思われます。
RMTというのは、本来のゲーム世界とは関係ない場で、
ゲーム内の貨幣の取引が行われているわけで、
それは、ゲーム世界の経済バランスに大きく影響します。
それを許してしまうFFXIのシステムや仕様も
未熟な部分があるわけですが、
本来のゲーム性を無視したプレイをする人がいる
ということ自体が病原であることは間違いありません。
300円程度で10万ギルも手に入れられるといわれれば、
それは確かに魅力的でしょう。
そのようなものに手を出す前に、
一体自分は何をするためにヴァナにいるのか、
ということを、少し考えてみて欲しいですね。
ゲームを楽しむためにヴァナにいるのではないのですか?

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